01総合カタログのタイプ
総合カタログの定義
総合カタログと言えば一般的に、取扱い分野やカテゴリーの全てにわたって、包括的に製品・商品、或いはサービスが網羅的に掲載され、その品目数で言えば数10点から数1000点、またはそれ以上、ページ数で言うと数10ページから多いものは数100ページにまで及ぶ冊子であると定義でき、まさにその企業の事業の総体である取扱品の集大成であると言えます。
ではこの総合カタログを制作事例・デザインを参照しながらタイプ別に見てみましょう。
顧客設置型
総合カタログの特性として、新規取引を目指すツールと言うよりは、顧客取引後のオーダーツールとして、顧客担当者に常備しておいてもらい、必要に応じて都度カタログを検索・閲覧してオーダーする、もしくはカタログを見て担当営業パーソンと具体的に商談を進めていく...等です。
企業担当者のデスク上やオフィス本棚に、各メーカーや商社の分厚いカタログ群をズラッと眼にします。
この場合、ライバル企業の同類製品・商品の総合カタログとの外見的な差別化は非常に重要で、厚さだけでないデザインや加工・装丁で存在感を示すことはまずもって心掛けたいものです。
この必要性はこのページで縷々ご説明していきます。
展示会型
展示会向けの総合カタログと言っても、展示会専用としてカタログを作ることは、取扱い製品の特性やアイテム数によっては大変効果を発揮します。
もちろん来場者に分厚い総合カタログを渡しても、いくら強い関心を示すユーザーでもありがた迷惑ですし、ユーザーは他の各ブースでカタログやパンフレットを持ち帰るため当然でしょう。
その場合、重厚な総合カタログは避け、単品・複数品のパンフレットやカテゴリーカタログがのぞまれます。
営業活動型
営業パーソンのカバンに重い総合カタログ...、結構シンドイものです。
総合カタログをポータビリティを高めることが可能なら、なるべくその負担を軽減化できる方法をとりることも選択肢でしょう。
カテゴリー別・分野別の冊子カタログや製品毎にリーフレット化・パンフレット化し、それを本体ポケットフォルダーやタトウ*に収納して一体的にまとめ上げると、総合カタログとなります。
このタイプだと営業パーソンはカタログ全てを常時携帯することなく行動がとれます。
実はもう一方では運用面でのメリットもあります。
掲載情報の改廃が発生した場合、その箇所の部分だけを差し替えればよく、長期的運用面でコストダウンに大きく貢献し、積極的に検討される価値は十分あると思います。
通販・BtoC向け
個人消費者向けの通販総合カタログは、昨今ではネットオーダーが主流になってきているため、縮小傾向にあると言えますが、アパレル系や百貨店系では登録会員へのDM等でむしろ積極的に展開されています。
例えば年度版やシーズン版でその時期の新製品や新作を総合カタログ化する、とは言え重厚なカタログは不向きで、なるべくコンパクトな40〜50ページ程度にまとめることが適しています。
その際製品特性や業種的には、ユニークな加工や形状、また規格外サイズなどもブランドイメージ形成には大変効果的です。
02総合カタログの効果的運用・管理
増刷で運用していく賢さ
コスト管理するカタログ
このような総合カタログは毎年、或いは3〜5年程度に一回、改定の度にリニューアルが必要です。
製品の改廃、仕様変更によるリニューアル、またはブランド刷新等による全面リニュアールです。
実はその変更箇所のみ印刷データを差替えすれば、そのまま増刷ができます。このことはデータ初期制作のイニシャルコストを削減でき、データ差替え料金と印刷料金(増刷料金)ですみます。
アイテム数やページ数が多い場合、この運用方法が総コストの低減や担当者の手間を省く効率運用を実現できます。
一歩進んだ総合カタログ運用のあり方
前述の『展示会型』『営業活動型』で言及したように、総合カタログと言えどもカテゴリーごとにコンテンツを仕訳し、カテゴリーカタログ・分野別カタログとしながら、それぞれのカタログを集合させれば総合カタログとなります。
このタイプのカタログでは、例えば情報や仕様に変更が生じた場合でも、変更箇所のみ差替え印刷をすれば済み、膨大な総合カタログをまるごと刷新、などといったことから解放され、コストを大幅に削減することも可能です。
このタイプの総合カタログをご検討の場合、採用できるか否かは製品点数やカテゴリー属性により異なりますので、弊社へご相談いただければ、その可能性を見出すお手伝いをさせていただきます。
総合カタログをPDFでWebに流用
特に珍しいことではありませんが、制作した紙媒体の総合カタログをPDFデータ化して、オウンドメディアで運用する、いわゆるWebカタログです。
特に製造業などの法人ユーザーの場合、導入の検討段階から精細情報を求めることも多く、いちいち問合せや営業パーソンとの商談にまで持ち込まずとも、Webサイトから必要な箇所のみダウンロードできるため大変重宝します。もちろんオフラインでも使えるため、DVDなどのメディアにプレスして活用することも効果的です。
また運用者サイドでは、紙媒体の総合カタログを作ったとしても、変更箇所のみ差替えアップロードし、サイト上に更新情報を掲載しておけば、本体の総合カタログは数年に一度程度のリニューアルで済み、コストメリットは大きいと言えます。
このようにWebサイト上で運用すると、検索エンジンのクロール対象にもなり、検索クエリでヒットするため、自然検索での集客効果も見込めます。
PDFデータ運用ポリシー
弊社では紙媒体で制作した総合カタログを、PDFデータにてオウンドメディアでの運用をご希望の場合、オウンドメディアでの使用に限り、無償にてPDFデータのお引渡しをさせていただいております。詳しくは弊社担当者にお尋ねください。
紙媒体カタログとe-カタログ(ページめくり)の運用
このe-カタログは一般的に言う”ページめくり”のことを言います。
一時期ほどでは無いにしろ、現在もWebとの連携で活用されています。
その操作性が紙媒体のようにページをめくって閲覧できることや、ページ検索、マーカー付け、付箋付け等の機能は使い勝手がいいと言えるでしょう。
こちらもページ差替えが個別に可能なため、PDFデータと共にWeb総合カタログとしての運用に効果的です。もちろん閲覧ユーザーはe-カタログ専用のソフトウエアがPCに無くても、そのインターフェースによる操作性は確保されます。
03総合カタログの検索性強化
検索性はカタログの命
弊社では総合カタログの命とも言える検索性やカテゴリー構成の設計は、制作着手する前の特に重要なフェーズと捉えています。
それは綿密で丁寧なヒアリングによって、顕在化され可視化されていくという知見を持っています。
特に重厚な総合カタログでは、カテゴライズのあり方や製品群の仕訳が重要で、ユーザーがほしい情報にスピーディーに辿り着くことができなければ、場合によっては大きなビジネスチャンスをロスしてしまうかもしれません。
つまりそれほど総合カタログの検索性は”総合カタログの命”ともいえるものです。
またこの検索のあり方も、常に分野別のカテゴライズが最適とは言えない場合もあります。
それは何を切り口にしたカテゴライズが適しているのか?
ターゲットユーザーの属性やユーザーの使用シーンによって検索設定を行うべきで、必ずしも品種別だけでなく、ユーザー属性によってはあえて目的別、用途別なども視野に入れることは必要と考えます。
法人ユーザー、個人ユーザーによって、また業種や職種によってもそのインタレストが大きく異なることも視野に入れておきます。
もちろんWebサイトのように複数の検索機能をシステム化することはできませんので、そこは制作着手前のカテゴリー設計で入念に検討を加える必要があります。
以下の作品画像は、その検索の切れ味やユーザビリティを決定づけるインデックスをご紹介します。
04コンテンツ設計のあり方
製品情報だけでいいのか?
総合カタログの場合、何と言っても大量の製品・商品点数となり、提供側としてやはりその情報を準備しまとめ上げることに大きな労力を要すため、総合カタログづくりにあたっては、担当者はまずもって情報集約に集中します。
また製造業でありがちなのが、プロダクトアウト的な製品ファクトありき、という考え方です。
それは至極当然のことで、製品・商品・サービスの直接情報がビジネスに直結するわけで、無理からぬことだと思います。
しかしながら、果たして製品情報の網羅だけで効果的な総合カタログと言えるでしょうか?
弊社の総合カタログづくりのスタンスはNo!です。
意外と語られていないこと
例えば同様の製品を取扱っている複数社の総合カタログが、全て製品情報のみだった場合どうでしょうか?ユーザー担当者はそこに何の違いも差別性も感じません。
つまりどこの社の製品に決定するか、いわずもがな、そこには無機質な価格競争や条件要求しか生じず、それらの要件でユーザーの要望を満たした社が受注する、必ずそうなるとは言い切れませんが、要因の一つになることは確かでしょう。
では弊社は何を提唱しているか?とは言え特に珍しいことではありません。
それはプロダクトブランドという要因です。ブランディングという差別的優位性を唱えるコンテンツです。また単にプロダクトアウトだけでなく、マーケットインのユーザー目線に立った情報構成です。
「6.ブランディング重視のカタログ」でも後述しますが、簡単にいくつか列挙してみます。
製品コンセプト
取扱い製品や製品群の強みや差別性をコンセプトデザイン、キービジュアル、キャッチコピー等で表現。
開発者のメッセージ
特に自社開発の製品を持っているメーカーでは、開発者による開発精神やポリシーについて語る。
キャラクターやマスコットの起用
直接のコンテンツではないが、ユーザーの印象付けや好感醸成には効果的。
ユーザーの声・インタビュー
上質のユーザーに登場いただき、同社、同社製品の有用性について語ってもらう。
導入事例
同社製品の導入社のケーススタディを紹介する。特に複数の機器を一体的に組合せ導入した写真入り事例は、閲覧ユーザーには結構参考になるものです。
導入シミュレーション
同社が最も強みを発揮する、または推奨する、例えば複数機器による導入シミュレーションを図説やバーチャルCGなどで解説する。
05クリエイティブデザインの高品質化
撮影ガッツリと刷物スキャンの比較
プロのフォトグラファーによるブツ撮り(製品撮影)は、いわずもがなの高品質が確保できます。製品ダイレクトにファクトを撮影するものから、イメージカットの撮影まで、必要に応じてスタイリストを投入するプロの撮影は、総合カタログの格や存在感を大きく高めるものとなります。
一方でコスト的、時間的問題で、対象の製品画像を印刷物からスキャンして流用するご要望がありますが、これは著しく総合カタログの品質を貶めます。別の側面では使用許諾無しの場合、著作権抵触にも関わる問題です。
また解像度や品質は向上したものの、スマホやタブレット端末での撮影も推奨できません。
なぜならば、食品、宝飾品、精密機器、金属工業品、化粧品等、またモデル使用の人物等、精密さやディテールの微妙な再現性を求める場合、照明によるライティング、寄り引き・アングル、スタイリストによるコーディネート...どれをとっても匠の技を必要とします。
以下の比較画像をご参照いただければ一目瞭然です。
総合カタログのデザインクオリティ
この総合カタログのデザインクオリティは一般的にあまり重要視されていない傾向にある、といっても言い過ぎではないと思います。
というのはあくまでも一般的な評価ですが、表紙はなかなかのクリエイティブなのに、製品情報ページになったら一気に品質低下になる、という総合カタログは枚挙にいとまがありません。
そこには様々な事情があるのでしょうが、表紙と製品情報ページは別のデザイナーが制作したのでは?と思ってしまうほどです。僭越ながら我々プロが見るとすぐにわかってしまいます。
この点ではアンバランス性、ブランドイメージの首尾一貫性の欠除は、総合カタログのクオリティを損なってしまいます。
ましてや前述したプロダクトブランドには程遠いものと言わざるを得ません。
06ブランディングデザイン重視のカタログ
プロダクトブランドの重要性
前項まで含め、総合カタログのカテゴライズ適正、検索性、効果的な運用方法、写真・デザインクオリティなど語ってまいりましたが、これら一つひとつの最適性の積み重ね、集合体がある意味でブランディングの要因となります。つまり製品・商品・サービスのブランド形成になります。
もちろん総合カタログの範囲だけ終始するわけではなく、絶対・相対の製品力、ソリューション・提案力、納期対応力、保守・メンテ対応力等々の製品そのものや実務本来の集大成を、総合カタログに落し込み表現していくことができれば、
まさに『プロダクトブランドを総合カタログで可視化・具現化』できた、
と弊社では考えます。
逆に言えば、製品情報がきちんと整理されて、きれいな・美しい写真、検索しやすく使いやすい...、
一見良い総合カタログと言えそうですが、前述の通り、それだけでは他社の総合カタログとはなんら違いはなく、むしろ”One of them”として埋もれてしまい、ユーザーの意識には好感・優位性として刷り込みはなされません。
総合カタログなのに会社案内とのハイブリッド
総合カタログは製品・商品・サービスの総体ですが、会社案内は企業情報の総体と言えます。
実はこの両者をドッキングさせて運用できれば、”企業総体”が実現します。
言い換えれば、『ブランディングの総合カタログ』『CIの会社案内』としても名実ともに”企業総体”を表すことができると言えます。
この『総合カタログ+会社案内』はその企業の業種、製品取扱いボリュームによっては、この手法がビジネス、広報、採用等に多目的で大変重宝します。
特に法人営業の場合、ユーザーに対し”企業総体”として高い存在感を示すことを可能とします。
また一体化せずとも総合カタログの冊子と会社案内の冊子をポケットフォルダー、タトウ、またはバインダーで綴じ込んで集合運用します。
そういう意味でもプロダクトブランドがビルトインされた総合カタログの重要性は一層高まることになります。