02ブランディングの実践テーマ
企業がブランディングに取組む機会として、日常の企業活動の中に様々存在します。
プロダクト、コーポレート、アニバーサリー、リクルート、HR、BtoB...、全てブランディングの実践テーマです。
しかしながらモノとして可視化し辛い、カタチにし辛い、すぐに収益性を伴わない「ブランディング」を、企業として積極的に取組むことは、決して多くは無いのが実情と言えます。
そのような中、企業の日常発生する、また遭遇する機会に着目し、それをブランディングの取組みレベルまでに押し上げ、実践していくことは大変価値あることと言えます。
「モノ」と「コト」のブランディング実践
ブランディングの中でも、企業ブランディングをはじめ、製品ブランディング、スクールブランディング、インターナルブランディング、サービスブランディング、キャラクターブランディング等は「モノ」や「器(うつわ)」に起因する取組みです。
一方採用、アニバーサリー、BtoB、BtoC、広報等のブランディングの取組みは「コト」や「動機」に起因します。
このようにモノとコトではブランディングの取組み方が少々異なるため、あえて仕分けしてご説明していきます。
「モノ」系ブランディング
企業ブランディングをはじめ、製品ブランディング、インターナルブランディング、サービスブランディング、キャラクターブランディング等々、「モノ」を軸とするブランディングの取組みです。しかしながらモノとはいっても、”ハコ”や”器(うつわ)”、”機能”、”スペック”などのハードに寄った考え方だけではブランディングとは言えません。
意外と我々日常でもすぐにハードや型から言及してしまうことはしばしばです。
顕在している、可視化できている情報やモノだけでは、それ自体では何の差別性や優位性は語れません。そこに潜む普遍的な価値、独自性、個性、存在意義などが、絶対・相対で語られること。少々難しい言及ですが、そこにフォーカスしなければ効果は限定的でしょう。
企業ブランディング
企業におけるCIや企業コンセプトの「我があるべき姿」をベースに、市場・顧客・エンドユーザーとのコミュニケーションに力点を置く取組みです。
企業という「モノ」に起因する取組みですので、ともすればCIや企業コンセプト中心になってしまい勝ちで、そうなってしまってはもはやブランディングではありません。
その取組みの核となるのは、企業の強み・ウリ・差別性・独自性等市場や競合との相対的な要素で、それをファクトだけで表わしても人々の心に刷り込まれません。
その表現方法としてコンテンツ化して情報で訴えるケース、ブランドメッセージ・タグライン・キャッチフレーズ等の言葉と語感で訴えるもの、またブランドロゴ、キービジュアル、ブランドキャラクター等の視覚的に訴える手法があります。
製品ブランディング
企業と同様モノの代表格の一つとしてこのプロダクトブランドがあります。大きく製品全般・カテゴリーのブランディングと、製品単品のブランディングがありますが、ここでもやはりモノとしてその仕様やスペック・機能情報に陥りやすい傾向は存在します。
製品力が高い製品でも、パンフレットやカタログではその特長を示す数値データ、機能、スペック情報に終始してしまう、言わば絶対値のファクト情報が中心。ファクトも重要ですが、それが市場やユーザーの導入でどうソリューションできるのか、市場競争力として他社と相対的にどう差別性を発揮するのか、その他切り口はその製品や製品群によって様々ですが、これらを巧みにコンテンツ化する、キャッチフレーズやタグラインで表わす、またブランドロゴやブランドネームの開発等、その製品の強みを表わす化身としてのネーミングも、顧客やエンドユーザーへのブランド認知の手法です。
製品力のある製品ほど、例えば「2000CS」、「FG800」などと製品名というより型番と言える名称がついていることがよくあります。これはモノとしての左脳情報で、ブランドネームやプロダクトネームで右脳情報化して人々の心に定着させるのも、プロダクトブランディングの一角を示す要素です。
スクールブランディング
大学・学園・専門学校・塾スクール等、学校全般のブランディングです。企業や製品と同様、モノとしてその運用ソフトや競合校を見据えてどうその差別力を発揮するのか、やはりそこにフォーカスします。もちろん人を育てる教育の担い手ですので、その創建・建学の理念、教育哲学等CIやスクールコンセプトを基本ベースにすることは必須ですが、このCIをより受験生やその父兄目線で視覚化・具現化させ、どんな学問をどのレベルで学べて、人づくりや社会づくりに貢献できる教育体制があるのか。それが競合校や他校とどう差別性や独自性があるのか、等々様々な切り口でその学校が持つ固有の属性に切込んで、うまく言語表現や視覚表現にしていきます。
また総合大学では、意外と学部・学科・研究室等の個性が見えづらく、大学総合パンフレットとは別途に、学部ブランディングを展開して、その個性的で独自性ある存在をパンフレットやガイドブックで露出化させることも大変有効性があります。
キャラクターブランディング
モノのブランディングに含めましたが、企業や製品・サービスのブランディングの一環でキャラクターを取扱うケースが多いためですが、そのキャラクターやマスコット自体はコト要素とも言えます。
BtoCの製品群、例えば家電製品ではエアコン(三菱重工)、携帯電話(ソフトバンクのお父さん)でのキャラクターは一般的に大変有名です。企業でもダイキン工業(ぴちょん)がイメージキャラクターとして、家庭用のみならず業務用・大規模空調まで含め、堂々とコーポレートマスコットのポジショニングを確立させています。
ここで重要なのは、企業ではCIの根源的要素を基盤に、製品ではその仕様・機能特性をもって、ユーザーやステークホルダーへ向け、その市場優位性や、もっと言えば企業価値やレゾンデートルのシンボル化とも言えるものです。素材産業や加工製品、またOHM事業等の企業・製品、いわゆる裏方的・黒子的事業内容、自社ブランドを持たない企業等、その存在をあえて親しみ深いキャラクターやマスコットに仕立てるものです。
「コト」系ブランディング
採用活動、アニバーサリー・周年記念、BtoB・BtoC取引、広報活動等のブランディングの取組みは「コト」や「動機」を軸とするブランディングの取組みです。
コトなので比較的ブランディングに親和性が高いようですが、これもファクトや上澄み情報オンリーになってしまうケースになってしまうことは否めません。
そういう意味ではこのコトの取組みが、「モノ」や「器」で終わってしまいます。
ファクトで顕在している情報それ自体では何の差別性や優位性は語れません。
モノと同様、そこに潜む普遍的な価値や独自性が、絶対・相対で語られることにフォーカスしなければブランディングの取組みとしては限定的となる可能性があります。
採用ブランディング
この採用ブランディングのアウトプット媒体として、パンフレット・Webサイト・ムービー、また合同説明会場のブースデザイン、その他ノベルティグッズ等があります。
この採用関連ツールでは、採用パンフレットにおいて社員起用の楽し気な職場環境、各部門の社員インタビューをメインにすることで、その企業の採用計画を語る全貌とすることになり勝ちな傾向があります。
これではこの超売り手市場の採用マーケットにおいて、媒体としての存在価値は限定的です。もちろん採用パンフレットが新卒学生の判断を決するのではありません。
しかしながら採用パンフレット等関連媒体が、新卒学生の意思決定に間接的に作用することが重要なのです。言わばそのミッションでいいのです。
学生に人気の大企業と言えども、もはや昨今の企業不正事件や倫理観欠如の振舞いでは安泰とは言えません。逆に中堅・中小企業においては千載一遇のチャンスです。
中堅・中小と言えども実力のある企業であれば、採用ブランディングの効果はむしろ大きいと言えます。
アニバーサリーブランディング
企業や製品・サービスの周年記念、創業記念を機会としてブランディングの取組みを行おうというものです。
1年・5年・10年・50年・100年...,この周年・創業記念という要因は、企業で言えば、企業のルーツに遡って語れるため、ブランディングが取組みやすい機会と言えます。
メーカーであれば創業時に夢や想いを馳せ自社製品を開発したコンセプトや苦労話。創業数十年の中、紆余曲折を繰返しながらも持ち合わせた強みを磨きながら、成長してきたヒストリー...。どれもCIスピリットをルーツとして、企業となりに触れ、顧客・ステークホルダーへ好感という情緒的な意識を刷り込む、ブランディングの作用が働きます。
製品やサービスも同様の考え方で取組むことができます。
この経年価値を広報する取組みとして、周年・創業記念パンフレットやWebサイトにより情報発信し、アイキャッチなシンボルとして周年ロゴデザインが存在します。上製の記念誌も良いのですが、インターナル効果が主体で、ステークホルダーには伝わりにくく、ブランディングの取組みとしては限定的です。
BtoBブランディング
企業間取引、法人営業を前提として自社ドメインを表わす会社案内、取扱い製品・商品をコンテンツとするパンフレット・カタログに絞ってブランディングの取組みをご説明します。
一見このBtoBブランディングは、「モノ」「ハコ」の延長線上ともとれますが、前項「企業ブランディング」や「製品ブランディング」でも触れた通り、会社案内・パンフレット・カタログ共に、単なる企業紹介、製品紹介に終始すればモノという結論になりますが、飽くまでもBtoB、法人営業を前提とするわけですから、これら媒体が取引を成就させる何らかの要素を持ち合わせること、営業パーソンの商談支援につながることなど、企業・製品・サービスについての差別的・相対的優位性、独創性...等、徹底的に深掘りし、顕在・潜在で洗い出しをします。
そこで得られた情報を、巧みにターゲットユーザーの感性に響く構成力や表現力を発揮すると同時に、一方でデータや数値をユーザーのインタレストに届く手法でコンテンツを構成することです。
また一口にBtoBといっても、国内企業の法人営業や海外展示会出展や拠点進出に伴うビジネス展開などがありますが、特に後者の場合、欧米人はこのブランディングをとても重視します。というよりむしろその文化や価値観が日常的に備わっているといった傾向があります。型式よりブランドネームと洒落たタイポグラフィー、機能も大事だがそれを包含するキャッチーな言語表現、自由度のあるアーティスティックなデザイン、コンセプトカラー等々、企業や製品をとりまくブランディングを非常に大切にします。
【NEXT】「ブランディングの会社案内・各種媒体との親和性」に続きます。
次のページでは、ブランディングと会社案内・パンフレット・カタログ、各種媒体との親和性についてご説明します。
弊社制作の導入事例も含めての実践解説ですので、非常にイメージしやすくなっています。
「ブランディングの会社案内・各種媒体との親和性」>>>