01再認識!パンフレットの定義 -そもそもパンフレットとは?-
製品・サービスやブランドの付加価値を高める媒体
パンフレットといえども業種・サービスやビジネスモデルによって、またBtoB商談、営業活動、採用、生徒募集、集客等その用途目的により多種多様に存在しますが、その定義は製品パンフレットであれば製品情報、採用パンフレットであれば採用情報、サービスパンフレットであれば、それぞれ固有のサービス情報が掲載されているもので、その仕様は一般的に用紙1枚もの、見開きタイプ、ページものの冊子形態の媒体と言えます。
パンフレット自体のミッションとしては、単に知識や情報発信だけでなく、ユーザーやターゲットに対し商用、ビジネス、採用、募集、予約、契約...など意思決定に直感性をもって直接的に作用するものと言え、会社案内が企業ブランディングを高めるものであれば、このパンフレットは製品・サービスブランディングの価値を高める役目を担うものでしょう。
企業情報、業務内容等を紹介する前項の会社案内や企業パンフレット・ブローシャー、また次項で触れるカタログやリーフレットとはその目的や情報構成の点で区別されます。
ダイレクトに意思決定させるのがパンフレット
様々例外は存在しますが、一言で言うならパンフレットは閲覧ユーザーへ、直感的に何らかの作用を及ぼすことに、その存在を求められることが多いようです。会社案内は直接的な意思決定に結びつけるというよりは、企業の価値を高めブランドイメージを醸成する、言わば信頼や信用の証を示すもの、またはその裏付けを担うものです。またカタログは分厚い総合カタログを想定すれば、オフィスのデスクや本棚に常備しておき、必要に応じてそこからオーダーしていく媒体と言えます。
直接意思決定に関与させるパンフレットは、一方で製品・サービス価値を高める製品ブランディングを体現するものでなくてはなりません。例えば、乗用車のパンフレットを想定すると、中・高級車の新車パンフレットは重厚な装丁と仕様、非日常的なイメージデザイン等によりその価値を体現させています。富裕層向けサービスのDMパンフレットやマンションパンフレット、海外の展示会・見本市へ出展するMade in JAPANの伝統工芸品パンフレット、ハイエンドで独自性の高い情報システムのパンフレット。これらのどれをとってもそのブランディングを形成する製品・サービスの価値は、優れたデザイン性、高品質なコンテンツだけでなく、用紙やサイズ、加工にまで拘りその差別性を打ち出すことが、ユーザーの心理や意思決定に作用するパンフレットとして有効と言えます。
02パンフレットをリニューアルする心得
リニューアル前のチェック
パンフレットのコンテンツやデザインを、リニューアル作成、刷新制作する際心得ていなければならないことがあります。
意外ですが、パンフレットが古臭くなったから、誰も使わなくなったから、上司から君がやってくれと言われたから、など明確な理由や根拠が無くてに作り替えなければならない、という動機は特に珍しいことではありません。
しかしながら掘り下げて話を聞いていくと、そこにはきちんとした動機や理由が存在することがしばしばで、その意味からも合目的な、目指すパンフレットを作成する場合、事前に満たしておくべき、パンフレットコンテンツの要点や作成に取組む心得を以下にまとめましたので、ご参照ください。
1.製品価値やサービスのブランドイメージを高めることができるパンフレットであること。
製品情報、製品写真、仕様・諸元等の製品・サービスの基本情報、いわゆるこれらのファクト情報・機能情報以外に、製品やサービスの価値を高める情報やデザイン性、ユーザーやターゲットの心理や意識形成に作用するような、潜在的ブランディングコンテンツにまで踏み込んだパンフレットづくりをしたか。ここは客観的に検証してみてください。
顕在情報やお客様からいただくオリエン情報だけで作るパンフレットは、ファクトを羅列しただけのものとなってしまう。それであればネット等で売られているテンプレートにファクト情報を流し込めば極めて安上がりだし、悪い言い方をすれば、無いと困る、あることが目的のパンフレットとも言えます。
●なぜ潜在情報が大事?
弊社でヒアリングを進めていく中で、「本当の製品・サービスの強み」、「業界やマーケットでの当該製品のシェアやポジショニング」、「顧客からの製品・サービスへの評価」等、製品の客観属性について明確な見解や評価を認識されていないお客様が意外と多いことに気づかされます。従ってお客様からいただく情報だけでパンフレットのコンテンツを制作することは、往々にしてその企業の本質や本来の姿を語りきれないことになるリスクをはらんでいます。
2.ブランディングを表す「モノ」になっているか?
前項1.がパンフレットでブランディングを表現する「コト」であれば、用紙の種類、加工方法、印刷方法、サイズ等は「モノ」。これに製品やサービスのブランドイメージを体現する、言わば用紙の選定、加工の有り無し、規格サイズか規格外サイズか。考察や精査無しに一般の流通紙やA4等規格内サイズで無難に収めたり、NET印刷にいとも簡単に流れていないか。
3.ブランディングデザインのコンセプトが明確でも、実際のパンフレットのデザイン品質が高いものであること、それが製品やサービスのイメージにマッチしていること。
デザインクオリティといっても、自社にマッチしており気に入っている、或は外部からも評判が良いものであれば良いクオリティといえます。ただデザインというのは、カッコいい、シャープでエッヂが効いている、ということが高品質とは限りません。素朴な手書き風タッチ、風合いのある用紙を活かした空間利用のデザイン、タイポグラフィ(文字デザイン)を活かした文字力あるデザイン…など様々です。
●その製品やサービスが高品質であるかどうかはパンフレットのデザインで決まる?
ユーザーが製品・サービスのパンフレットを見て信頼できるかどうかを見極める要件が、そのデザインクオリティだ、と捉えている人が、実はユーザー全体の半数以上にも及ぶと言われています。
4.営業活動、採用、資料請求、生徒募集等、目的や用途が明確で、対象とするターゲット層やペルソナにコンテンツやデザインが最適化されている。
パンフレット作成の際、古くなったから作り替える、上席からリニューアルしろと言われた、デザインがカッコ悪いから等、そこには明確な目的や用途が定義されておらず、情緒的な理由になっていないか?このような動機で制作した場合、使い勝手の悪さや、どういう目的に使うにも中途半端で、結局早々に再リニューアルを余儀なくされ、労力やコスト的にも大変無駄です。
5.リニューアルするにあたって、関係部署の意見や要望を聞いたか、実際に過去のパンフレットを使用していた関係者の意見を集約したか。
パンフレットをリニューアルする場合、理由はどうであれリニューアルする定義を明確にする。そのために刷新にあたって社内の意見を集約し、念入りにダメだしをしておけば、これから作成するパンフレット作成の要件定義に活かすことができます。
03【導入事例】パンフレットリニューアル -Before & After-
【事例-01】株式会社サンオート 様/ 電位治療器の製造・販売
リニューアルの経緯《”製品リニューアル”と”民間市場参入”でパンフレットリニューアル》
電位治療器という健康機器を企画・製造・販売しているファブレスメーカーの製品パンフレットリニューアル事例です。業務用マーケットではトップブランドを築いてきた同社様。約10年前に初版の製品パンフレットを弊社にて作成し、製品のマイナーチェンジに加え、これまでの公的市場を中心としたチャネル政策をさらに民間市場へも拡大するにあたり、パンフレットのリニューアルプロジェクトに携わりました。
パンフレット”Before”
Beforeの旧パンフレットでは、比較的高齢者へのメッセージ性を高めたいという要件。介護施設や高齢者福祉施設へのこれまでの導入実績から、視覚的には派手さを抑え、落ち着いたシックなイメージというお題で、茶系と深い緑系の色調によりターゲットイメージ・ペルソナイメージをBtoBで明確化しました。
“After”の新パンフレット
前述の通り、取扱い製品のマイナーチェンジと民間市場チャネルへの参入を請けてのパンフレットリニューアルですが、その本質は”Before”との変更は無く、営業戦略の転換によるターゲットゾーンの多様化と、使用シーンのダイバーシティ化であると言えます。その意味ではブランディングのイメージチェンジであり、その一部は本体機器の青色からサーモンピンクへのカラーチェンジです。
またこれまでの福祉関係中心の事業展開から、民間のデイサービス、フィットネスやスポーツジム、健康センター等、民間市場の潜在ターゲットに参入することから、対象年代層の幅も若年層にまで広げることが要件となってきました。つまりデザイン・コンテンツ全面において、製品パンフレットを大幅にリニューアルする必要性が高まり、そのブランドイメージの一新となりました。
【事例-02】フォーシーズ株式会社 様/ 不動産保証会社
リニューアルの経緯《入社案内パンフレットを“新入社員の声”で刷新》
不動産家賃保証の業界で、独自のビジネスモデルをもって成長を遂げる企業の、入社案内パンフレット制作導入事例です。
4年前に初版の入社案内パンフレットを弊社にて携わり、その後2度にわたって新卒採用に使用し、2年前に全面リニューアルを迎えることとなりました。
パンフレット”Before”
同社様では初めて作成する採用入社パンフレット。その時期それまでも同社様の求める人材が計画通りに採用でき、比較的好調な採用活動はできていました。しかしながらこれからも確実に求める人材を確保し続けたい、このようなご要望から初版の入社案内パンフレット作成に至りました。
提案したコンテンツ設計の骨子は、わかりにくい、見えにくい事業内容の明解な説明と、その将来性・発展性のビジョン。それと社長を交えた社員による忌憚のない座談会。
これらをコンテンツとした採用入社パンフレットを、実際に合同説明会や学生の会社訪問などに積極的に使用してみると、同社様の仕事への理解と強い興味を示した学生が多く、それが計画通りの内定・採用につながった一因であると、効果を体感できる入社案内パンフレットであったと言えます。
“After”の新パンフレット
さらに2年後、採用戦線は益々ヒートアップし続け、これまでのように好実績が続く保証はない、という危機感からも、入社案内パンフレットのデザイン・コンテンツを一新する、という意思の下、リニューアルチームを同社様の若手・新入社員を中心に結成いただき、弊社と共にまず現状分析から着手を始めました。
そこで得られた意見を集約すると、初版パンフレットの座談会の評価がすこぶる高いもの。ほぼ全員がその座談会コンテンツが入社志望の後押しになった、ということから、この際座談会の誌面ウエイトを高め、その細分化までやってしまおう、という提言を加えました。
また事業も堅実に右肩上がりの成長を遂げており、前年には企業メッセージとしての新ブランディング、「1000年輝く企業をつくる」という力強い主張のタグラインができ、これをこの入社案内パンフレットの主張に入れない手はない!パンフレットの表紙からこの力強いメッセージを、就活生に向け発信することとしました。