01学術性・公益性が高いとはいえ広報・宣伝物
アカデミックでもファクト情報だけでは限定的
公益性の高い国策レベルの産学官共同の基礎研究、大学研究センターの調査研究、高度な最先端技術など、その技術情報や研究内容を発信する手段は、学術研究パンフレットやリーフレット、またWebサイト、映像媒体、学術書、その他各種広報ツールがあります。
しかしながら、研究成果や調査結果・エビデンス情報、またその拡張性や将来性など、データや数値・機能性などのファクト情報だけでは、広報・告知ツールとしてはその効果は限定的だと考えます。学者・研究員や学会など学術関係者であれば、咀嚼や情緒的なイメージ化は不要ですし、その場合は学術書や研究資料で十分でしょう。
産業・民生・庶民も対象になりうる
研究テーマによっては民間が加わったり、その技術やナレッジの導入ターゲットが産業・民生目的の場合、商用性が高まります。さらに不特定の一般人も対象に含めるならば、自ずとその存在が明確になってきます。その目的・ターゲットによっては欧米・アジアなどグローバル展開も視野に入る研究テーマもあります。従って先のその先のターゲットやエンドユーザーを想定すると、やはりパンフレットのコンテンツ作成の在り方が大きく異なるものとなります。
02高品質デザインとブランディング
広報目的だから馴染みやすく、コンタクトポイントを意識
広報物・宣伝物であること、さらに産業・民生目的、広く一般人にも告知するともなれば、民需としての技術・研究モデルの発展性や可能性に触れること、また裏付けとなる市場に投入された場合の、最終形態の製品やサービス化を想定するエンドユーザーとのタッチポイントのイメージ、マーケティング的な考察や分析情報、それらの価値感や差別的優位性を捉えたブランディング、さらにそれらを可視化・具現化するための高品質なグラフィックデザインが必要と捉えています。
また通り一遍の正攻法による文章表現では、人々の気持ちを揺るがす動機にはなりません。デザイン性と並行して大事なのが、キャッチコピーや本文のコピーライティングです。パンフレットやWebで記述されている文言が、学術的文章の延長であれば、特に関係者以外の将来利害を共有する人々に、その本質的価値が届かないかもしれません。
ブランディングデザインが広報媒体の最終形
機能性や技術に関するファクト情報だけでは終わらない、パンフレットなどの広報媒体の姿とは?
学者・技術者以外の利害関係者へ刺さるそのコンテンツやスペックは、その学者・技術者が思いもよらぬ、といっても過言ではないほど情緒的なものです。
その利害関係者の意思決定に作用する要素は、そのパンフレットや広報媒体のデザインやコンテンツから感じ取れるブランディング要素かもしれません。
そこに盛り込まれた好感・共感につながる無形の資産、そこから形成されていく差別的優位性。
少々大袈裟ですが、最終的に対象のユーザーの意識に関与する、言わば左脳に加え右脳に感情で大きく作用する、広告的なブランディングのアプローチが非常に大きいものと弊社では提唱しています。
03実践導入事例紹介
【導入事例-01】早稲田大学 大学総合研究センター 様
顧客情報
高等教育における研究、及び授業方法・入試制度の在り方を見直し、その最適化を図ることで、普遍的な教育システムや大学経営のモデルを作り上げることを目的とする学内の研究機関です。
この同センター様から、内外にその存在と活動情報を発信していきたい、というリクエストから弊社にて様々な角度から広報手段の検討をしました。
媒体制作の要件定義
そもそも同センター様活動の広報対象は、学内関係者、関連校、官公庁・企業と、アジアや欧米を中心とした海外の教育関係団体、さらに学内の学生への活動啓蒙があります。
高等教育関係者や官公庁には比較的ストレートな表現でよいが、学生への周知では、その本質理解は困難な事から、パンフレットタイプを教育関係者向けと学生向けの2通りとしました。前者はグローバル対象で英語版も同時作成することとしました。
一方で学内の学生啓蒙に紙媒体の使用域を越え、同センターのプレゼンスやさらに普及されていくICTツールに興味をもってもらい、ゆくゆくは次世代で、同センターの担い手として志望してもらえるよう、その予備軍の学生へのPRツールとして、映像媒体とノベルティを提案し、採用されることとなった。
ブランディングデザイン
しかしながら、その媒体がそのターゲットやペルソナ毎に細分化できたとして、それが単にファクト情報の羅列で、ビジネスドキュメント一遍で構成されていたらどうでしょう?読む気になれない、それ以前に媒体を手にも取ってもらえない、興味も湧かずスルーされてしまう。
そこでそのフックとなるのが、ブランディングデザインです。
同センター様のオリジナリティを保ちながら、そのドメインである早稲田ブランド。この二面性を両立させる要素として、「大隈講堂」と「羅針盤」をステンドグラス風にシンボライズし、前述全ての媒体での均一化されたブランディングデザインで作成することを了承いただきました。
メインとなる三つ折りリーフレット
上画像の三つ折りパンフレットが学術パンフレットのメイン媒体。ブランディングデザインのシンボル、大隈講堂と羅針盤のステンドグラス風アイコンは、大きくリーフレット表紙を飾り、見開きの中面でもコンテンツのバックグランドに配置されている。上:日本語版、下英語版
学生向けICTパンフレット
上画像は学内の学生向けだけでなく、早稲田志望の高校生にもICTによるシステマチックなラーニングを伝えるパンフレットです。国内のみならず海外の早稲田志望者にもその素晴らしさを広報する英語版も作成しました。このパンフレットにもシンボルがアイコニックです。
【導入事例-02】山梨大学 クリーンエネルギー研究センター 様
顧客情報とパンフレット作成要件
山梨大学直属の施設として燃料電池と太陽電池・環境科学の2つの研究部門から構成され、主に電気自動車、家庭用燃料電池の研究、革新的な太陽エネルギーの研究を行う、まさに次世代日本のクリーンエネルギー実現を担う先端的基礎研究を行う学内機関です。
企業との産学連携のPR、学内外への活動告知することを主たる目的として、受験生にもこの価値ある、夢多き科学への誘いができるパンフレットを作成したいというご要望です。
デザイン・カラーコンセプト
クリーンエネルギーと言えば一般人でも比較的イメージしやすいものですが、「燃料電池と太陽電池・環境科学」の学術研究というと専門性が高く、学内外へ発信する広報パンフレットとしては、専門用語、技術情報を列記しただけでは非日常的な学術書となってしまい、広報の役割を担えなくなります。
そこでデザイン性は自然素材を活かしたイラストタッチと、我々の日常生活シーンでその科学がどのようにいかされているかにフォーカスし、専門家から企業ビジネスマン、高校生、一般人まで幅広く親しみを感じ、馴染めるデザイン設計としました。
カラーリングは環境色・ナチュラルカラーの緑をベースに、崇高で研究の付加価値の高さを表す紫をポイントカラーとして、自然と高貴をカラーコンセプトに、パンフレット全体の色調を整えました。
コピーはキャッチ―な表現は控えめながらも、的確なセンテンスでそのアウトラインを俯瞰的に捉えてもらえるよう工夫を凝らしました。
パンフレットの構成要素
6ページ片方が観音開きになる「片観音折り」という構成です。最下画像のように片面をフルオープンにすると3面見開きになり、ダイナミックな表現方法ができると共に、そのアウトライン全貌を一覧させることができるのが、その大きな特徴です。
あえてアカデミックなコンテンツを、このようにビジュアライズさせることは、リテラシーの無いユーザーへの理解と共感を得る効果的なスペックと言えます。
表紙では緑基調の地球イメージの中に、メッセージコピーを添えた紫色の吹き出しが秀逸。研究テーマと山梨の両面の存在価値を一層高めています。