事例に見るロゴデザインができるまで
ロゴマークという存在の位置付けはCIの要素の一つ、
VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)と言えます。
このBLOGの「CI【MI・BI・VI】の取組みとその価値」
でもご紹介してきました。
まあ細かいことはそちらに譲りますが、
企業の理念・哲学・ビジョンなどをシンボルとして表し、
それを化身として可視化したものです。
今回はそのロゴマークをお客様から受注した後、
弊社のアカウントディレクター(以下ディレクター)やデザイナーによって、
作られていく過程を紹介し、
お客様の校正による評価・要望を経て、
最終的にフィックスしていくまで、
さらに決定したロゴデザインが会社案内やWebサイトへどのように反映されたか、
まさにロゴ新規作成から運用までの一連のファクトを、
ノンフィクションでご紹介します。
ロゴ導入の経緯と要件
今回ケーススタディとして取り上げることとなった、ロゴマーク制作のご依頼主は、
東京千代田区の企業様。
その前段として会社案内、コーポレートサイトの制作をご依頼いただいていましたが、
実はそれらの媒体のヒアリングを重ねていく過程で、
同社の代表取締役の方(以下社長)と面談させていただく機会があり、
- 現社長は昨年代表取締役となられた。
- 来年には会社設立から50年を迎える。
- 新分野へ新たな企業ビジョンを描いている。
- 従って会社も社員も意識を変えていかなくてはならない。
等々、このようなファクトや要件が明確になりました。
ただ明らかになっただけでなく、
実は担当ディレクター、
この社長のお言葉を見逃さなかったのです。
そもそも従来より企業ロゴは存在していましたが、
ここまで与件が揃うと、これはもはや企業のターニングポイント。
ロゴマークのリニューアルを持ちかけたのです。
これが社長のご意思に沿い、承諾をいただくこととなりました。
といった塩梅で、実は”逆流”でのロゴ受注となったのですが、
ロゴ作成からいわゆるCIツールといわれる会社案内やコーポレートサイトを、
一貫してプロデュースする機会は、弊社にとって最も得意とする展開。
急遽ロゴを先行制作することとなったのです。
決定したロゴの行き先は、
もちろん会社案内、コーポレートサイト。
その他にも名刺やその他の印刷物・広報制作物です。
コンセプトとマークの基本設計
数度のヒアリングやセッションを経て、
得られた様々な情報や要件を集約し、
組立てた基本コンセプトを簡潔に述べると、
「50年間、一途に責任感をもって仕事に取組み、
そこで培った人間力と顧客からの信頼。
この何ものにも代え難い自慢の人間力と信頼を糧に、
これから新しいビジョンにチャレンジしていく勢いを、
企業のアイデンティとする。」
この基本コンセプトをベースに、社内で制作を進行することとなりました。
このプロジェクトで編成された社内のスタッフィングは、
もちろん担当ディレクターに加え、デザイナー2名、
それにWebディレクター。
このチーム編成をプロデューサーで管理していくというもの。
早速アカウントディレクターとデザイナー2名にて、
マークデザインの基本設計を練っていくこととなりました。
基本コンセプトに基づき、
まずは様々な角度からチームでブレーンストーミングやアイデアフラッシュを重ね、
ラフデッサンを作成、それを持ち寄りまたディスカッション…..
こんなセッションを何度か辿り、Illustratorのデータ化、
さらにそこから絞り込みとブラッシュアップを重ね、
初稿案を8案で臨むこととしました。
初稿のデザイン案
以上のコンセプトや経緯から提示した、
ロゴマークの初校案は以下の通りです。
一部を抜粋してまとめてお見せします。
実際のお客様への初校レビューは、
下画像の形式で、1点1点個別にそのコンセプトを記載し、
デザイン案ごとに担当ディレクターがプレゼン形式でご説明します。
そのプレゼン席上にはご担当者様に2名に加え、
社長もご出席となりました。
やはり代表自らのご出席は、
会社の化身となるロゴデザインを決定する場面に立ち会うという、
まさに重要な機会と捉えておられるのでしょう。
一通りのプレゼンが終了し、
ある程度の納得感をいただき、
社長よりこの8案を社内投票にかけたい、旨のお話があり、
その投票結果フィードバックは後日いただくこととなりました。
そしてそのフィードバックの内訳です。
結果3案に絞り込まれました。
このページ最上位に配置しているロゴ画像の、
【社内フィックスのデザイン8案】のラインナップ画像中、
上段左端、中段真ん中、下段真ん中、
の3案となりました。
この中で社名の「ア」をモチーフにした案(下段真ん中)について、
人の指(指差し呼称)が隠れ表されていることは、
自社の仕事の基本であり、自社と親和性が高く、とても好感が持てる。
この案をさらに発展させ、
「どんなことでも一番を目指す姿勢」という要素をここに盛り込めないか?
社長直々のご要望をいただきました。
二校のデザイン案
ディレクターはすぐにチームメンバーを集めました。
実はこの急遽浮上してきた要件に、皆は戸惑いが無いと言えば嘘になる。
うーーーん…….
全員寡黙になった、のも束の間。
社名「ア」モチーフ案を作ったデザイナーから、
「アクシスネットなので、イニシャルをAにするのもありですよね?
アをAにし、指差しの指を反転し、さらに反時計方向に90°回転させれば、
指で“1”を表すイメージができますね!」
その場で手書きでデッサンした。
全員「なるほどー!」
ということで、出来上がったのが下の画像、
カラーバリエーションも加えた。
ここには画像は無いが、あとの2案もご要望を踏まえブラッシュアップ。
新ロゴ決定!とVIマニュアルの策定
以上の経過から、
同社様による二校のレビューで「Aの1」案で絶賛をいただき、
「ネイビー+赤」のカラー設定で決定となりました。88888888…..
やはり丁寧なヒアリングで、インサイトを引き出し、
それらの要件に基づくコンセプト設計をしたことにより、
かなり本質を明確化でき、それをマークのデザイン設計に表現できたため、
比較的早期にフィックスできました。
ただ惜しむらくは、
”1番を目指す”要件を初期段階で引き出せなかったことでしたが、
初校案の提示後に同社様でなされた社内投票により、
社内からも色々とご要望があったようで、
それがヒントになり、そのタイミングで見えてきた要件でもあったようです。
以下新ロゴを定義する「VIマニュアル」です。
VIコンセプト、使用条件等全ての基準がここに、したためられています。
新ロゴに息を吹き込み、血を通わせる
最後に前段で申し上げましたように、
決定したロゴの行き先は、
会社案内、コーポレートサイト、印刷物・広報制作物です。
ロゴはそれ単体では魂の入った”器”でしかありません。
ここまで手間暇かけて作ったのですから、少なくとも企業の魂は入っています。
しかしながらロゴの本来の目的はVI。
つまりヴィジュアル・アイデンティティ=【視覚の統一】です。
人々の視覚に入ってなんぼ、
初めてその存在が明らかになり、
息が吹き込まれ、血が通いきらきらと輝くのです。
と言えば少々大げさですが、そんなもんです。
その嫁ぎ先とでもいいましょうか、
その場所が、様々な広報の機会、広告の機会でしょう。
今回同社様のロゴの嫁ぎ先である、
会社案内、コーポレートサイトを共通の概念で一体的に制作。
それこそそれらの媒体も、逆にロゴと言う魂を授かり、
ともに同じ血を通わせる機会を得たと言えるでしょう。